雹(ひょう)でへこんでしまったルーフ(屋根)を
例にデントリペアの作業行程をご紹介いたします。
①デントリペア作業前~ヘコミの状況確認
雹(ひょう)が降ってしまったことでクルマ全体に100か所ほどのヘコミが…。
デントリペアではドアパンチなどのヘコミが1か所の場合から、雹(ひょう)が降ってきてヘコミが数百か所できた場合まで数を問いません。
基本的には裏側からヘコミをすべて押し出していくことで直していきます。
ヘコミの場所へテープなどで印をつけ、ヘコミの数や場所などを細かくチェックします。
②内張りの取り外し
(ドア等のヘコミは、ほとんど外さないで直せます)
ヘコミの裏側を押せる環境をつくるため内張りを取り外します。
屋根部分で今回の様にヘコミの数が多いときには基本的に天井部分の内張りを外して作業をします。
屋根部分に限らずボンネットやドアなどツールを入れられる隙間がある場合や、部品を取り外す事でツールを入れる穴が確保できる場合には内張りは取り外しません。
※ヘコミが数か所程度の時や、ヘコミの裏側に構造上ツールが入らない場合は表から引っ張り出す工法(プーリング)で直す事もあります。
③ヘコミ裏側の確認~デントツールの支点を確保
デントリペアはテコの原理を応用して裏側から直接ヘコミを押し出します。
デントツールの種類や作業によって支点の取り方は違いますが、ここではフックを利用して支点を作ります。
④デントリペア作業
デントリペア専用のライトでヘコミの状態をよく確認しながらデントツールを使いテコの原理で裏側からひとつずつ丁寧に押し出していきます。
裏側にフレームなどの障害物がある場合にはその隙間に入るような薄く作られたツールなどでリペアしていきます。
どうしてもツールが入れられない場合には表側からヘコミを引っ張り出す技法(プーリングといいます)を使います。
ひょう害でできる程度のヘコミなら、どこにヘコミがあっても鈑金塗装せずに直せるように様々な技法やツールを使いわけて全体をリペアします。
⑤ヘコミの最終チェック~完成
ヘコミが残っていないか、リペアしたヘコミに歪みが残っていないかなどを全体的にチェックをした後、取り外したパーツや内張りなどを取り付けて完成です。
デントリペアと鈑金塗装はココが違います!!
デントリペアと鈑金塗装のおもな違い
比較項目 |
デントリペア |
鈑金塗装 |
修理金額 |
●ドアパンチなどのヘコミ修理で一番多いケースでは1~2万円前後です |
●ドアパンチなどの小さなヘコミでもパテ埋め・塗装作業が必要になってきますので4~5万円程度はかかります |
仕上がり |
●指で押したようなヘコミやドアパンチ程度はまったくわからなくなります |
●時間がたつとヘコミを埋めるパテ(ペースト状の盛り付け材料)が痩せて修復跡があらわれやすい |
所要時間 |
●ヘコミの数が1~2個所なら30分~2時間程度で即日仕上げ |
●設備のある工場でよい仕上がりを求める場合は数日~2週間ぐらい |
直せない |
●塗装がはがれているヘコミやひどいキズがある場合 |
●塗装をすることが大前提なので塗装にひどいキズがある場合や、バンパーやミラーカバーなどの樹脂部分でも直せます |
デントリペア工法について
ヘコミ部分の塗装をはがさず、そのまま裏側から様々な
ツールで押し出しす事で、ヘコミを修復する技術です。
デントツール
ただ、鉄板がへこむということは多少なりともその部分に伸びが発生しますし、鋭くへこんだ場合にはその部分にだけ鉄板にくせがついて硬くなる(塑性変形〔そせいへんけい〕といいます)現象が出てきます。
ツールの先端をへこみの裏側に入れ、支点をとってテコの原理で直接へこみを裏側からじっくりと押し出していきますが修復ノウハウがないと簡単なへこみでもシワになったりゆがみが残ったりします。
使用するツールには様々な種類があります。長さ数センチのものから1m以上のものまであり、先端の形状、曲がり具合までたくさん種類があります。
デントリペア専用ライト
そういった部分をいかになじませ、へこみを押し出していくかがデントリペアの技術の見せ所でもあります。
一般の方が直るかどうか、試しに押してみる…。
しかしへこみがゴツゴツに飛び出すばかりで、なかなかわからなくなるまで綺麗に直すのは難しいと実感されると思います。
ノウハウとツール、そして適した環境が必要とされる技術です。
プロがプロ専用のツールを使い、デントリペア用に整備された最適な環境で、高いノウハウを駆使してリペアを行う…。
完全にへこみがわからなくなる仕上がりを求めるためにはここまでこだわる必要があります。
専用のライトでへこみの様子を見ながら押し上げていきます。よい仕上がりのためには少し暗めの環境でライトの光を映しこみ微細なゆがみやシワを確認できる事がとても重要です。
一般的に用いられている "鈑金塗装工法" の流れ
①鈑金塗装前のヘコミの状態
ヘコミの大きさや裏側の状態などを確認してこれから鈑金作業にはいります。
②塗装をはがし鈑金作業をする
ヘコミの部分の塗装をはがしてワッシャーを電気溶接し、スライドハンマーをかけて引き出しなから鈑金ハンマーで鉄板をならしていきます。
ワッシャー : 鈑金引き出し用の五円玉のような銅製のリング
スライドハンマー : 引っ張り方向に力を加えられる鈑金工具。ワッシャーに引っ掛けて使います。
③パテ付けをして面を整える
鈑金作業後に残る鉄板のゆがみやわずかなヘコミなどを平らにするためパテを盛り付け、硬化したあとにサンドペーパーで研いで面を整えていきます。
通常は鈑金パテ+ポリパテといった目の細かさが違うパテで2工程の面出し作業を行います。
パテ : へこみを埋めるためのペースト状の盛り付け材。硬化剤とまぜて使うことで短時間で固まる。
④サフェーサーを塗装する
パテをサンドペーパーで研ぎ、形を整えたら表面のペーパー研ぎ目を埋めたり塗料の食いつきを良くするためのサフェーサーを塗装します。
サフェーサー : プライマーサフェーサーとも呼びます。パテと本塗り塗料(ボディカラー)との間で使う中塗り塗料。
⑤ボディカラーを調色し再塗装~磨き作業で完成
通常は3~8種類程度の原色塗料を塗料メーカーの配合データを参考に計量器で計りながら混ぜ合わせます。計って作っただけではなかなか実際の色とぴったりとはいかないので塗料を熟知した職人が微調色をおこない、現車に近づけます。
その後、塗装作業を行ない乾燥後に塗装中についたゴミやブツを取り除き塗装の肌(ゆず肌)をポリッシャーで磨き整えて完成です。
原色塗料 : 関西ペイントや日本ペイントといった塗料メーカーが自動車補修用に用意している塗料。50~90種類の原色の中から配合データ指定の数種類を混合します。
ポリッシャー : ボディの塗装面を磨いたり、つや出しをするための電動工具。取り付けた羊毛やスポンジで出来た円盤状のバフにコンパウンド(ペースト状の磨き粉)つけて回転させ塗装面を調整します。
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